以前、短期滞在でパリを訪れた際、用事が早く終わったのでリュクサンブール公園で過ごすことにした。
9月といえばパリはもう秋だが、太陽の機嫌が良すぎて歩くと汗ばむくらいに暑かった。
リュクサンブール公園までは、ルーブル美術館方面からセーヌ川を渡り、なんとなく南の方へ歩いていけば着くだろうというふわっとした位置感覚で迷わずに到着できた。

道中マダムに道を聞かれ、お店を探していたみたいだけど私にわかるはずもない。パリに限らずフランスで過ごしていると、本当によく道を聞かれる。一人旅なので観光客に見られないように心掛けているからかもしれないし、日本人だから誠実な答えが返ってくると期待しているのかもしれない。
もしかすると、単に自分よりも小柄な女性だから話しかけやすいからなのかもしれないけれど、決まっていつも知らない場所なので申し訳なく感じている。フランス語もそこまで理解できないし。

公園には観光客もいたが、どちらかというと地元民や近隣の大学生が多い印象で、日光浴をしたり読書をしたり、軽食を摂っていたりと思い思いの時間を過ごしていた。私はといえばこの暑い中よく日なたぼっこができるもんだと思いつつ、日かげのベンチを探すも快適な場所のものはすべて埋まっていた。
木々の生えているところを歩いてあたりを見渡してみると、1人掛けの椅子がゴロゴロと無造作にいたるところに放置されていて、それを移動させて使用している人がいた。椅子を2、3個使用して、荷鞄置きに脚置きに、カスタマイズしている人が多かった。マナー的に良いのか悪いのかは別として。

私もそれに倣って椅子を一つ拾って、日陰で読書を始めた。しばらくすると、公園に来る前に売店で買ったジュースの甘い香りに誘われて、蜂が近づいてきた。私は蜂が苦手なので、軽くパニックになって逃げようと慌てていた。そこへ、近くに座っていた男性が見かねて「大丈夫だから落着きなさい」と言った。
私が落ち着くと、蜂も気が済んだのか去っていった。話の流れで男性から名刺を差し出され、彼はフランス語講師だという。ムッシュはフランス語しか話さないので、私がどうして彼の言うことを理解できたのかよくわからない。一応、フランス語検定3級を持っているから理解できたのかもしれないけれど、今となっては会話の内容は日本語でしか思い出せない。
ともあれ、私のつたないフランス語を理解してもらうしか意思疎通の方法はないのだが、なぜかちゃんと話せている気がしてきた。もしかすると、彼が普段接している生徒の中には、フランス語を上手に喋れないけど、相手の言っていることは理解はできるレベルの者たちがいて、彼らと同じものを感じてうまく話を誘導してくれていたのかもしれない。
私が今読んでいる本が、ジョルジュ・サンド(フランス人作家)の本だと告げると、「この公園にジョルジュ・サンドの像がある」と言い、そこまで案内してくれた。まさかふらっと訪れた公園に現在読んでいる本の作家の像があるとは、感無量だ。

写真を撮り終えると、ムッシュはレッスンの時間だからと去って行った。最後、何を言っているか分からず近くの松葉杖をついた青年に英語で通訳してもらったのだが、その青年も嫌な顔一つせず、むしろ満面の笑みで応じてくれた。パリの人が冷たい?どこの世界線だろう?と思った。
もしパリに住んでいたら、レッスンを受けてみてもよかったかもしれない。むしろその営業?w
椅子のない芝生の上にも多くの人が座っていて、のんびりと過ごしている様を見ると私もゆったりとした気分になった。公園で過ごす時間はある種のメディテーションで、リフレッシュになるような気がする。在宅勤務の引きこもりの私からしたら、散歩も公園で過ごすこともハードルが高いのだが。

この後だったか、公園の中を歩きながら散歩中の犬を見ていたら「犬好きなの?」と声かけられた記憶がある。パリにいると、道を聞かれる以外にもよく声をかけられるので驚く。私はあまり社交的な人間ではないので、急に話しかけられるとどうしていいか分からなくなるのだけど、日本でも大阪の人ならもう少し上手に話せるのかもしれない。(大阪の人は見知らぬ人にも「そのブローチ素敵ね」とか声かけるらしい)
私としては、沈黙は自由な思考時間であり、安心するのが本音だ。もう少し、いい意味で表面的な社交的な会話ができるようになりたいと常々思っているのだけど。
この日の夕方、スーパーのMONOPRIXでレジの列に並んでいたら、後ろのマダムから声をかけられた。
「あなたは10個以下の買い物だから、あっちの早いレジに並べるわよ。もしよければだけど」って教えてくれた。自分の順番が早くなるからということも含めての親切かもしれないけれど、日本より(東京より)他人同士が話す機会が格段に多いし、人と人の距離が近いと感じた。
東京なら上記のことに気づいても、あえて言わない人が多いと思うし、それだけでなく、東京に一人で暮らしていると、まったく人と話をしない日すらある。同じ都会でも、パリではそういうことはなかった。それが当たり前なんだろう。
また、別の日に訪れた売店で、店員の女性はとても不機嫌だったけれど、私がつたないフランス語で「国際郵便用の切手がほしい」と告げたときに冠詞が抜けていて(le mondeをmondeと言った)、それをしっかり訂正して言い直してくれた。単に、私が子供に見えたのかもしれないし、嫌味かもしれないけど、血の通った人間の交流という感じがする。それに、厚意ととっておいたほうが幸せなので、そうすることにする。
ちなみに、パリで散歩をしていると、特にダラダラ歩いているわけでもないのにナンパも多い。(むしろ、私は歩くのが早い)割とごり押しだし、断ろうとしても日本的な婉曲表現はあまり通じない。
バリエーションは豊富。会って数分で「君のことが好き。ごはん食べに行かない?」って言ってくる店員、道を歩いているときに話しかけてきて「こんにちはマドモアゼル、パリに住んでるの?座って話す?それとも一緒に歩く?」といきなり2択を迫られたり、「ねぇ、ちょっとちょっと、こっちきて! 日本語教えて!」と声をかけてきて、実はナンパで食事に誘われるパターンとか。「写真だけ撮らせて」とか(嫌すぎる)。突拍子もないので、一瞬質問を理解しようとしてしまうのが悔しい。
悪い人たちではなさそうだったけど、観光地にはいろんな詐欺やスリ、犯罪があるので一人旅の人はとくに気を付けてほしい。パリの女性はガン無視していたので、多分ナンパに関してはそれが最適解。