最新脳科学本『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる』のレビュー

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またまた脳科学本レビューです。

正確には、レビューというか引っかかった部分の感想文、みたいなものですがw

1月に発売していて、その頃に購入して読了しているんですけど、感想をまとめるのが億劫ではや半年経っていました…。

そして書き始めてからも1ヶ月経っていた!ひぃ

 

 

『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる』思考、記憶、知能、パーソナリティの謎に迫る最新の脳科学

 

 

カーヤ・ノーデンゲン/羽根 由 誠文堂新光社 2020年01月10日頃
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by ヨメレバ

 

 

この本、とても良いです!!

最新脳科学について、今現在わかっていることをまとめてくれています。この一冊でいいんじゃないかってくらい。(あれ、前にも言ってた?)

一般の人がわかりやすい表現で説明してくれていて、普通の人が自分ごととして考えられるような興味深いテーマ、一つ一つのテーマについて飽きない程度のボリューム感、多岐にわたって網羅されたテーマ、帯の中野信子さんの言葉にもある通り「日常に活かす」提案、完璧だなって思います!!褒めすぎ?

 

もちろん、今まで読んできた脳科学本に書いてあることと重複している部分もありますが、復習として読みつつ、著者による解説や実例でより理解を深めていくことができます。

とにかく、一節一節がテンポよく読めるので疲れないし、一日一節ずつ読んでも数分なのでちょこちょこ読みでもいい。

あと、挿絵もわかりやすくてよかったな。

 

なぜ脳科学本を読むのかといえば、知的好奇心によるところも大いにありますが、人生において悩んだり苦しんだり辛い思いをする比率を減らしたい…というのが本音のような気がします。

読み進める途中で目にした文に、「あなたが脳について知れば知るほど、ネガティブな衝動を楽に抑えられるようになります」「あなたの周囲の人たちー健康な人でも病気の人でもーのパーソナリティと脳の関係が容易に理解できるようになります」とあります。

おそらく、この本でも上記のような希望を持った読者を想定しているのでは?と思いました。

 

 

大ボリュームなのでさらっと中身をまとめると

第一章、脳が進化してきた様子、ほかの生き物との比較、哺乳類との比較、人間としての脳の進化の話から始まります。

第二章、パーソナリティはどこに存在しているのか?脳の各部位がどんな働きをしているのか?損傷してしまったらどうなるのか?などパーソナリティについて

第三章、記憶と学習について。短期記憶と長期記憶、長期記憶における事実記憶と運動記憶(事実は覚えてないけど身体で習得したことは覚えている、など)、海馬と前頭葉・小脳と大脳基底核の関係と役割、シナプスとLTPについて、認知症(脳の機能不全)について、など。

第四章は、「脳内GPS」(空間認識)について。

第五章は、感情について。どんな感情になるかは、脳が決めているということ。身体的反応と感情、記憶と感情について。感情は表情(神経細胞)に影響を受けているということ、うつ病とセロトニンについて、ストレスの良い面と悪い面、不安障害と克服法、脳と愛情の関係、など。

第六章は、知能について。IQ・IQテストについて、知能に対する遺伝と環境の影響について、人工知能について、など。

第七章は、マルチタスクについて。

第八章は、文化について。文化から学ぶこと、人間同士が協力し合うことについて、社会との関わり合いについて、創造性について、音楽と脳について、宗教や物語の類似性について、など。

第九章は、脳と食について。依存症、食品業界や広告について、食事の胎児への影響について、など。

第十章は、薬物依存について。コーヒーやニコチン、アルコールといった依存性の強いものついて、など。

第十一章は、脳科学のこれからについて。

 

以下、個人的に興味深かった点をつらつら書きます。

前頭葉が私にとって重要だと判断し、注目させた点ともいうのかなw

 

同調圧力について

第二章のパーソナリティのところで触れられる話題ですが、「通常の知能を持つ人々の65パーセントが、権威者から指示されれば、仲間に危害を加える可能性がある」という研究について書かれている一節があります。

確かに集団心理って不思議なもので、冷静に見ていれば「常識」的ではないと感じることでさえも、組織内ではたやすく行われてしまっていることって意外に少なくなかったりしますよね…。(私がいた会社がブラックだったからともいうw)

直接的ではなく、間接的に人道的ではないことをする場合であっても(この場合は90パーセントの人が従ってしまうそうです)、かなりのストレス反応があるらしいです。集団の中で是とされていることに従っていても、間違いなく脳は苦痛を受けているんですね…。

著者は心理学者アーヴィング・ジャンスの言葉として、「自分にとって非常に重要、かつ親密なグループで働いている時には、大いに警戒が必要」で、その理由を「他人を不快にさせるような意見や情報を口にしなくなるから」と挙げています。

興味深かったのは、ストレスに関していえば、従ってしまうよりも抵抗したほうが楽なのだそうです。同調圧力の強い集団の中で声をあげることは勇気が必要かもしれないけれど、長い目で見たときに自分を守るのは何か、気に留めておきたいと思いました。

仕事などの責任が伴わないような集団であれば、そっと離れるのもアリなのかな。

 

記憶と学習について

この章は、日常に活かせるヒントを拾うことができました。

単純な話なんですけど…「記憶とは知識を保存すること」「学習とはその知識を習得すること」であり、「学習とは学んだ情報を保存したり取り出したりすること」という文章を読んで、単に記憶しているだけのことって多いな…と反省しました。

とくに、読書に関しては読んだそばから内容を忘れることの多いこと多いこと!

それって記憶すらしていないのではないか?というツッコミはさておきw

 

他人を見て必要な動作を学ぶことができる、という点は無意識でしたが大いにあるなぁと再確認しました。私自身ピアノを弾くのでわかりますが、楽器を含む身体を動かす運動系は文字で読むより動作を観察したり、動画などで解説付きで見てしまう方が断然早いですね。

その時はよくわからなくても練習しているうちに「こういうことだったのか」と、学習した情報と体験がつながる瞬間は、とても嬉しいものです。

また、集中したり(視床と前頭葉)感情を伴う(扁桃体)ときの方がよく覚えられる、という点。読みやすい文章よりも、集中力を要する読みにくい文章の方が内容を覚えていることが多い…確かにそうかも知れません。イライラするから、視床と前頭葉と扁桃体がフルコンボで力を貸してくれてるのかもw

 

すぐに使えるネタとしては、「記憶力はどうしたらよくなるのか」という一節があります。

過去の受験勉強の時に一通り教えてもらった勉強法にも重複しますが、集中するために睡眠不足とストレスを避ける、できるだけ多くの感覚を使う(声に出す、文字に書き出す)、試験対策であれば試験と同じ状況を作る(静かor騒がしい)、記憶の取り出しをする・覚えたことを思い出すこと(問題をとく)、など。

面白いなぁと思った箇所は、(試験であれば試験会場と)同じ状況を作るというところ。お酒を飲んでいる時に覚えたことは、お酒を飲んでいる時に思い出しやすいらしいです。使う言語も同じく、海外での出来事を思い出したかったら、当時使っていた言語を使うと思い出しやすいとのこと。

昔は英語の勉強がてら英語で本を読んだりもしていたんですが、どうしても定着しないのはそういうことだったのか…w(私の実力不足?)

 

思い出すということは、脳内に散らばっている記憶の断片を集めてくる作業だといいます。そして、記憶するときも、思い出すときも、そっくりそのまま記憶しているわけではなく、「推論や過去の経験に基づいた一般的な知識を利用」して断片、残骸に肉付けをしているんだそうです。

ちょっとした誘導やかけられる言葉の違いで、「思い出す」内容が変わってしまうこともよくあるんだそうな…。もうこうなったら、自分が記憶している出来事、思い出なんかどこまで信用できたもんじゃないなwって思うんですけど、、

逆に言えばツライ過去も、もしかしたら自分ででっち上げているのではないか?本当にそうだったのか?って少しだけ冷静に見つめる、客観視するきっかけとなり、救われました。

 

 

脳内GPS

脳内GPSを働かせるグリッド細胞と場所細胞、という言葉が出てくるんですけど、ざっくりいうと今いる場所を認識するのに、脳内で六角形のグリッドを脳内に作っていて(地図のように)、さらに目印となるランドマークに当たる部分では場所細胞という神経細胞が活性化するんだそうです。

まさかラットや人間の脳内で、仮想空間のようにグリッドが敷き詰められて空間認識をしているなんて思いもしなかったので驚きました。

さらに驚いたのは、場所細胞はある特定の場所の記憶情報も提供してくれる、というのです。

過去のある場所を思い出した時に、心はそこへ飛んでいってる…ってことなんだそうですが、もちろん物理的に移動できるわけではないけれど、脳内GPSは移動してるってこと何ですよね。

つまり、一回行ったことのある場所には、もう一回、いつでも、好きな時に遊びに行ける!ってこと(ただし脳内で)!!すごくない?まさにルーラじゃんw

妄想人間な私はよく遠くに行くんですけど、あながち間違った表現ではなかったのかも知れない…。

今現在(2020年7月)私は新型コロナ感染者の多い東京に住んでいることもあり、都道府県越えや旅は控えようと考えていますが、写真でも見ながら脳内で今までいったところにもう一回行ってこようかと思いますw

 

そのほか、方角を示す「頭方位細胞」、境界線(フェンスや山や川など)に面したときに発信する「ボーダー細胞」、移動時間を示す「スピード細胞」など空間認識に関するいくつかの細胞が発見されていて、その解説も興味深く読みました。

 

 

表情による神経細胞から発信して、感情が動く

楽しいから笑う、のはなくて、笑うから楽しくなる。みたいな話。

表情を作った時に神経細胞が信号を送って、感情を生み出すんだそうです。

一例としてボトックスについて挙げられていますが、ボトックスによって神経細胞が麻痺して表情筋が動かなくなると、「怒りと不安の中枢」である扁桃体の働きが鈍るというのです。

言うなれば、作れない表情に対応した感情は感じられない、ってことなのかな?

うつ状態の人の眉間にボトックス注射を打ったら、2ヶ月間抑うつ状態が緩和したという結果もあるそうなので、上手に使っていけばツライ状況が改善するのかも知れませんね。

 

先延ばし癖を治す方法があるだと!?

先に延ばしたからといって楽になるわけでもないし、返って長い間ずーっと頭の中に気になることが居座るってわかっているのに、やっぱり先延ばしにしちゃうんですよね。

能力がないのではなく「意欲がない」、「長期的満足よりも短期的満足を選んでいる」状態、「課題の重要度評価を誤った結果の副作用」…もう何も言うことなしです。

普段は部屋の掃除なんて別に好きじゃないのに、むしろ嫌い寄りなのに、ここぞとばかりに始めたりするアレですね。すぐもらえる報酬よりもだいぶ先にもらえる報酬の方が価値が低いと思っているから、先延ばしをしてしまうんだそうです。

 

紹介されているのは、大きな課題は小さな課題に分解することや、休憩時間に自分にとって達成感の強い課題を挟んだり、終わったらこうなる!という嬉しいことやメリットをちゃんと想像することなど。

あと、先延ばしをしなかった時に「自分をちゃんと褒める」というのも効果的だそうです。

「生まれた時から怠惰な人はいない」という言葉にちょっと救われた気がします…。うん、頑張る!!

 

あと、意欲に関して重要な神経伝達物質がドーパミン。ドーパミンが意欲に関わる部位(大脳基底核と前頭前皮質)で多く分泌する人はバリバリ働けるようです。

ドーパミンが出てればいいってわけではないんですね。現に、怠け癖のある人は島皮質でたくさんドーパミンが出てるみたいです。

じゃあどうしたらいいか。先ほどと重複しますが、やはり望んだ状態に達した時に、自分を褒めてあげることが重要なんだそう。

最後に、やる気がなくても我慢してずっと続ける…てのが古典的な方法ですよって紹介されてました。確かに…。シンプル。

 

クリエイティビティに関して

第8章では文化と脳の関係について触れられています。

世界のあちこちで生まれた神話や童話が、それぞれの文化圏を超えて交流していたわけでもないのに、なぜだか似たようなストーリーであることの謎。

著書の中では雷を例にとって、世界中の神話でどのような神が描かれているかを挙げています。

神話の類似性については、大学の時、一般教養の宗教学の授業でさらっと習ったので知っていたけれど、脳科学という切り口から見ると「人間の脳は同じように機能している」という結論に至っているようで、自分が今まで見知ったことも別の切り口から見てみると面白いな、と思いました。

 

あと、クリエイティブな人と統合失調者は視床におけるドーパミン受容体が少ない、という研究結果があるとのことで、ゴッホが精神病院に入院していたことやムンクの不安障害について触れられています。

実は、私は小さいながらも小説で賞をとったことがあるのですが、偶然にも精神科に通っているときに書いたものでした。自分でもいいものが書けたと実感できるときは、心が病んでいるときが多かったと何と無く感じてはいたのですけど、まさかの事実に驚いています。

今はもう10年以上、薬も飲まずに安定しているけど、クリエイティビティはほとんどないなぁと感じるし、創造することへの意欲も湧き上がらない状態です。(ちょこちょこ下手くそな絵を描く程度)

「芸術家(と言えるほどでも決してないけれど)」としては残念なのかもしれないけど、ふつうに暮らせることありがたみの方を選んでいるのかもしれません。

まぁ、今あの状態になったところで、自分にとっての「傑作」が生まれるかどうかもわかりませんけどw

そんなわけで、芸術といっても様々ですけど、全てのクリエイティブな人ってタフだしすごいなぁと思います!!(語彙力w)

 

脳に必要な脂!魚を食べるのだ!

脳の調子を整えたり、新しい神経細胞やネットワーク形成、認知症や記憶障害を防ぐのに、オメガ3が必須とのこと。

食事から摂らないといけない必須脂肪酸(DHA、EPA)で、あぶらの多い魚に含まれているそうです。

学生の時、DHAのサプリを親に飲まされてたなぁ…あんまり頭良くなかったけど。

お魚を調達したり料理したりも毎日だと大変なので、早速さば缶と鮭缶は常備するようにしました。あ、でもツナ缶はパスタ用によく消費してたな。何かと便利ツナ缶!

鯖と鮭はたまに臭いがきになるので(体調?)、くさみ消しのハーブも常備w

備蓄にもなって一石二鳥。

 

コーヒーについて

健康を気遣って、じわじわコーヒー減らしたいなと思ってたんですけど、きっぱりやめるきっかけになりました。(著者は、夏の間にカフェイン断ちをしてリセットする、と言ってます)

コーヒーが思ったよりも依存性が高くて、神経伝達物質や受容体の増減に関わっているということを改めて認識したという感じです。

脳に直接働きかけるような成分のあるものを、毎日朝から昼過ぎまで3杯くらい飲んでいたっていうのが恐ろしいですw

 

コーヒーに含まれるカフェインの効果は有名ですが、ざっくりいうと疲れを感じさせないようにし、ドーパミン、アドレナリンが多く出るようになります(脳が活性化したり、集中力が増したりする)。

カフェインは疲れを伝えるアデノシンという脳内の神経伝達物質によく似ていて、アデノシンの代わりにアデノシン受容体と結びつきます。それで、疲れを感じないようになるんですって。アデノシンさんいっぱいいても、受容体と結びつかなければ伝わらないので…。

しかし、コーヒーを飲むことでシャキッとしても身体が疲れていることには変わりなく、だんだん同量のカフェインでは「効かなく」なってしまうというわけなのです。依存症こわ!

 

コーヒー断ちはいきなり挑戦すると離脱症状が出ることもあり、段階的に減らしていくことがすすめられています。

私の場合は、頭痛、眠気、だるさ、やる気のなさ、フルコンボでしたw

コーヒー断ちエピソードは記事一つ分にできそうなので、後日書こうかな。。

 

 

というわけで、長くなりました。

また引っかかった部分があったら書き足す、かもです。

 

カーヤ・ノーデンゲン/羽根 由 誠文堂新光社 2020年01月10日頃
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